グラフィック薄氷大魔王[113]ドローイング用の紙やモールスキン関連の続編
── 吉井 宏 ──

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《これまでのあらすじ》
スケッチブックやノートの端やノド部分の段差が苦手なのと、新しいスケッチブックやページに描くとき気負ってしまって描けなくなる「新しいページ恐怖症」な僕。いろいろ試した結果、「A4ペラの紙に描くのがいちばんいい」ということになり、ここ数年はそれでやってきた。また、モールスキンのページが180度開いて平らになるのが気に入って、昨年の秋から使い始めた。というところまで書きました。
< https://bn.dgcr.com/archives/20061011140300.html
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< https://bn.dgcr.com/archives/20061101140200.html
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で、最近、好みや状況が変化してきたので書いてみます。


●デカいスケッチブック→A5の紙

A4のペラ紙はほどよいサイズで描きやすく、A4の四つ穴バインダーにきれいに収まって具合がいい。それでA4に統一したままいけるかと思ったのだが、ある仕事のために大量のアイディアスケッチを描いていたとき、A4の紙を狭く感じてしまった。そこで、B3サイズのスケッチブック(見開きでB2。A4の6倍の面積)と、特大の画板を買ってきて描いてみたらすごくキモチよかった。大きく描くのもキモチいいが、ページの端の段差を気にせず1ページ当たりのスケッチの個数が多いのがいい。隙間を小さいスケッチで埋めていくと、すごい数のアイディアスケッチを1ページに描くことができ、ひと目で見渡せる。デカいので取り回しは最悪だけど、紙のサイズから解放されたような気がした。

どんどん描くぞ〜っと思ったのだが、A4スキャナでスキャンできないのだった。考えてみりゃA4紙が便利なのはスキャンに都合がいいからでもあった。困ったあげく、デジカメで(歪みを最小にするためなるべく遠くから望遠で)撮ることにした。手ブレ防止もついてるので下絵の取り込み程度だったら十分イケる。

大きなスケッチブックにラクガキして、気に入った部分をデジカメで撮り、Macの画像管理ソフトに入れたり修正や変更を加える。という方法をしばらくやってみたところ、ふと気がついた。これって、デカいスケッチブックである必要ないじゃん!

つまり、描くのはノートでもチラシの裏でも、最終的にデジタルで管理するつもりなら、A4用紙でもデカいスケッチブックでもなくてもいい。用紙サイズをそろえる必要すらない。鉛筆で、パソコンとタブレットで描くより容易に手軽に素早くスケッチを描き、撮影やスキャンが済んだら紙は捨てちゃってもいいのだ。いやもちろん、それはデジタルに移行した15年前でも考えていたことだけど、「アーティストの思考の軌跡であるところのスケッチブックの束」というものにずっとあこがれが残っていて、紙イコール描きやすいタブレットみたいなものと割り切るまでには至ってなかったのだ。あ、割り切れちゃった。

そう気がついちゃったら、「取り回しのいい紙」というのが描きやすい紙ということになる。様々な紙を試すうちに、僕にはA5サイズが合っているらしいことがわかってきた。クルクル回して描けるし机に並べて見るのも都合がいい。ファイルするならA5システムバインダーが使える。A4の紙に10個程度描いていたスケッチが、A5サイズなら2〜3個でちょうどよく、1枚1個でもいい(僕の場合、ほとんどがキャラクターデザインのスケッチなので、単位がはっきりしてる)。

これが何を意味するかというと、A4用紙に10個描いたスケッチの1個が使い物(発展させたり提出する価値があるスケッチという意味)になる確率なら、9割が使い物にならないのにもかかわらず、たった1割のために捨てられない紙となる。しかし、A5用紙に2個描いた場合、5枚のうち4枚は捨てることができ、残す1枚に描かれてあるのは5割〜10割が使い物になるスケッチ。結果、残したA5用紙の内容は非常に濃くなる、というわけ。

大きなスケッチブックに描くと、後で見るときにいっぺんにたくさん見通せるので都合がいいのも一旦気に入った理由だったのだが、デジタル化しちゃえば画像ブラウザでもピクチャーアイコンでもクイックルックでもPDFでも、何でもアリでアナログより便利なのは確実。何だったら数がまとまったらA4にプリントして製本したっていい。

あと、大きな紙にラクガキしていると、ある瞬間以降は「ゲージュツ的にページを埋め尽くす」ことが目標になってしまうことがあり、そうなるとアイディア出しとほとんど関係なくなってくる。ゲージュツ的スケッチブック作品を制作するのはこの際やめておきたい。

びっしり描き込まれた歴代スケッチブックの束の夢を捨てたとたん、すげー便利な新ドローイング生活が見えてきた。アイディアの軌跡はJPEG画像でいいのだ。スキャン済みの紙は、捨てないにしても、デジタルで管理してある限りそれほど大切に保存する必要もなし。なんか自由だ。

●モールスキン

Moleskine Large Plain Notebook基本的には普通にメモ帳として使い、空いているスペースにラクガキする程度の使い方。白いページに絵を描こうと意気込んで描くのではなく、空いたスペースに「イタズラ描き」として気負わず描くところがミソ。白い画用紙ではなく教科書の余白に描くほうがワクワクするってニュアンス。そうやって「プレーン(無地)」のLarge版を10ヶ月もかかってようやく使い切った。っていうか、ノートやスケッチブックを最後のページまで使うってこと自体が僕にとっては非常にめずらしいことなんだけど。

使い切ってみての感想は、角アールとゴム紐のおかげでカバンやポケットでかさばらず、いつも携行していて苦にならない。用紙は水性ボールペンや色鉛筆などで描きやすい。180度ページが開くとはいえ、ページが膨らんでしまうのを指で押さえなければ描きづらいのが難点。

Moleskine Large Sketch-bookというわけで、二冊目のモールスキンは「スケッチブック(紙の厚さが倍)」のL版を選択。三分の一くらいまで使ったところです。紙が厚紙っぽくて硬いのでページがプレーンよりは膨らまず、描きやすい。ただし、折りの具合によってはきれいに開かないページもある。また、ページ数が半分で同じ値段ということがあって、しょーもないラクガキを描きとばす気分になれないのと、あとで見るときに内容量が半分なのもちょっとつまらない。

次にまたモールスキンを買うとすれば、たぶんプレーンLを選ぶだろう。ただし、上で書いたことに関連してA5のシステム手帳に移行しちゃう可能性もあるけど。ほんと、考えがどんどん変わっちゃうので、参考にしてる人がいたらすみません。

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com

11月19日からGyaoがMacで見れるようになったそうだ(要Silverlightプラグイン)。でも20日現在、僕のMacからは見れた番組がひとつもない。サイトタイトルには「Macでも見れる」と書いてあるんだけどなあ。あと、どういう不具合か、ページを開くたびどこもクリックしてないのに「画面上でクリックはできません」って警告が何度も何度も出てウザい。まあ実のところ、WindowsマシンでもGyaoは今までほとんど見てないんだけど、GyaoはMacが軽視される象徴のような存在だったので、見れるようになるのはいいことだ。

LeopardでのATOKが原因の「ファイル名変更でFinder不正終了問題」。ATOK 2007のアップデータが出たので入れたけど解決せず。サポートページによれば、リスト表示でのみ発生し、アイコン表示やカラム表示では起きないとのこと。やってみるとたしかにそう。ファイル名を変えるときだけことえりでやっていたけど、とりあえずアイコン表示で書き換えすることにしよう。

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