●アクセスの数が増えれば人が死ぬという設定
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少し前のことだが、「ブラックサイト」(2008年)というダイアン・レイン主演のサスペンス映画を見た。流行のサイコキラーあるいはシリアルキラーものだが設定が凝っていて、なるほど現代ではこんな犯罪も可能なのか、と少し落ち込んだ。ネット社会のダークサイド(結局、人間自身のダークサイドだ)を扱っていて、テーマ自体が現実を批判している。
ヒロイン(ダイアン・レイン)は刑事の夫が殉職し、母親と同居して娘を育てているFBIのサイバー犯罪捜査官である。一晩中、様々なサイトを監視し、犯罪行為を摘発している。場合によっては罠を仕掛けて犯人を特定し、地域の警察に連絡して逮捕させる。
彼女が夜の勤務に就いているのは、朝、帰宅して娘を学校に送り出すことを日課にしているからだ。娘が学校にいっている間に眠り、娘を迎え食事をさせて、出勤する。その落ち着いた母親ぶりが、歳を重ねたダイアン・レインによく合っていた。
ある夜、彼女はとあるサイトのライブ映像を見付ける。子猫が監禁されていて、そのサイトにアクセスするたびに子猫の命が縮まる仕掛けになっている。ネットで情報が駆け巡りアクセスが増加し、子猫はアッと言う間に死んでしまう。サイトから「みんなで一緒に殺した」というメッセージが発信される。
ところが、次の獲物は人間だった。裸の男が監禁された映像が映る。アクセス数が増えると、男の周りに仕掛けられた照明用の白熱ランプが点灯し、男を灼く仕掛けだ。男の皮膚が火ぶくれになり、悶え苦しむ様子がライブで映る。FBIはアクセスしないようにアナウンスするが、アクセス数はどんどん増えていく。
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ヒロイン(ダイアン・レイン)は刑事の夫が殉職し、母親と同居して娘を育てているFBIのサイバー犯罪捜査官である。一晩中、様々なサイトを監視し、犯罪行為を摘発している。場合によっては罠を仕掛けて犯人を特定し、地域の警察に連絡して逮捕させる。
彼女が夜の勤務に就いているのは、朝、帰宅して娘を学校に送り出すことを日課にしているからだ。娘が学校にいっている間に眠り、娘を迎え食事をさせて、出勤する。その落ち着いた母親ぶりが、歳を重ねたダイアン・レインによく合っていた。
ある夜、彼女はとあるサイトのライブ映像を見付ける。子猫が監禁されていて、そのサイトにアクセスするたびに子猫の命が縮まる仕掛けになっている。ネットで情報が駆け巡りアクセスが増加し、子猫はアッと言う間に死んでしまう。サイトから「みんなで一緒に殺した」というメッセージが発信される。
ところが、次の獲物は人間だった。裸の男が監禁された映像が映る。アクセス数が増えると、男の周りに仕掛けられた照明用の白熱ランプが点灯し、男を灼く仕掛けだ。男の皮膚が火ぶくれになり、悶え苦しむ様子がライブで映る。FBIはアクセスしないようにアナウンスするが、アクセス数はどんどん増えていく。
この仕掛けには、ちょっと考えさせるものがあった。僕は嫌いだから見ないのだが、ネットでは殺人シーンや死体の写真が掲載されているという。イラクで人質になり殺された日本人の映像は、かなりの人が見たらしい。そういう映像を見たがる人がいるのは知っているが、「ブラックサイト」の設定ではアクセスすることは殺人に手を貸していることになるのである。
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40を過ぎても見事な肢体を披露してくれるのはうれしいけれど、どうも僕にはなじめない。おそらく、13歳で出逢った美少女のイメージが強いからだろう。僕が「リトル・ロマンス」のローレンが気になったのは、ひどく聡明な役だったからだ。「ブラックサイト」のヒロインも落ち着いた聡明な女性で、印象に残った。
●「リトル・ロマンス」以降の成長が気になっていた女優
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その頃、ダイアン・レインは20歳前である。少女の顔から大人の顔に変わりつつあったが、妙にケバくなった印象が僕にはあった。妹の堕落を見るような気分だった。それに、マット・ディロン、ミッキー・ロークが不良少年を演じた「ランブルフィッシュ」、トム・クルーズやエミリオ・エステベスが不良少年たちを演じた「アウトサイダー」では、あまり精彩を放っていない。
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「ストリート・オブ・ファイヤー」はアクション映画であり、ロック映画だった。映画が始まると、劇場中にギターとドラムスのリズムが充満する。何かを期待させ、煽るようにロックのリズムが響き渡った。音楽を担当したのは、ライ・クーダーである。
真っ黒なスクリーンに「ロックンロールの寓話」という文字が出る。次のクレジットは「いつか、どこかの街で」というもの。架空の街を舞台にしたおとぎ話だと断っているのだ。やがて、どこかの街の劇場が映り、「帰ってきたロックの女王エレン・エイム」の看板が見える。観客が、リズムに合わせて拍手をする。
リズムが変わる。ステージでドラムスがシンバルを叩く。ギターが力強いイントロを弾く。音楽が盛り上がったところで、エレン・エイム(ダイアン・レイン)が走り出てくる。赤と黒のステージ衣装だ。マイクの前で歌い出す。そこから一曲まるまる歌ってくれるのだが、そのステージを映し出す映像は、当時のミュージックビデオに影響を与えたほどの見事さだ。
やがて、スモークの中に不気味な男たちのシルエットが立ち上がる。観客の中のひとりの男の顔が浮かび上がる。骸骨のような顔に逆三角形に逆立て固めた髪、ひと目見たら忘れられない男だ。目には狂気をはらんでいる。日本の観客はその男を初めて見たが、あまりに印象的で演じた俳優は有名になった。
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●ステージで歌うダイアン・レインが記憶に刻み込まれた
一時期、僕はLDで購入した「ストリート・オブ・ファイヤー」の音声だけをカセットテープにダビングし、通勤の途中に聴いていたことがある。一時間半ほどの映画だから家を出るときにオンにすると、ちょうど会社に着いた頃に終わる。最初のステージのシーンに呼応するように、ラストも盛大なステージシーンだからノリノリになり、仕事を始めるのにもいい。
最初からロックのリズムをギターとドラムスが刻んでいるのだが、それは途切れることがない。人物のセリフの背後でも常に鳴り響いているのだ。途中、スローなバラードが挿入されるときは別だが、常にリズムセクションがリズムを刻んでいる。ライ・クーダー調のギターのメロディが挟まれる。
トムはエレンを救い出し途中でバスを乗っ取るのだが、そのバスには黒人4人のボーカルグループが乗っている。彼らはバスで地方巡業していたのだ。その4人組の歌がいい。古いモータウン調のハーモニーからロックまでこなすグループで、彼らの歌が入るのがアクセントにもなっている。
ラストシーンのステージでは、彼ら4人をバックに従えてダイアン・レイン演じるロックスター・エレンが歌いまくる。スタイリッシュな映像を撮らせたら一番のウォルター・ヒル監督だ。スモークと色鮮やかなライト。エレンのステージの動きも見事に決まる。
映画が公開されたのは、まだ昭和と呼ばれていた時代だった。1984年、昭和59年の8月である。僕は32で、子供が生まれたばかりだった。カメラ雑誌の編集部にいて、毎日、何となく生きていたような気がする。ある日、汗だくになって歩いていた僕は、有楽町のチケットビューローの前に置かれたダイアン・レインの等身大ポスターを見た。
映画を見てわかるのだが、それはステージで歌うエレン・エイムの姿だった。赤と黒のステージ衣装。肩を露出し、髪を乱し、少し顎を上げている。片手の拳を力強く握りしめ、今にも突き上げようとしていた。セクシーだったし、力強くもあった。あのローレンが…と、僕は感慨深いものを感じてすぐにチケットを買い日比谷の映画館に向かった。
あれから、25年が過ぎていった。振り返る時間は、いつもアッと言う間に過ぎてしまう。「ストリート・オブ・ファイヤー」を見た僕は、しばらくその話ばかりをした。ウォルター・ヒル監督の映像的なこだわり、「夜と室内のシーンばかりで、昼間のシーンは雨。太陽の光はない」だとか「逆光とシルエットを多用する」といったマニアックな話を繰り返した。
しかし、僕が「ストリート・オブ・ファイヤー」を気に入ったのは、ステージで歌うダイアン・レインが記憶に刻み込まれたからだ。女兵士マッコイはカッコよかったし、ウィレム・デフォーの悪役は強烈だった。石切場で使うようなハンマーで決闘するシーンも手に汗握った。しかし、ラスト、ステージにすっくと立ち、男たちを従えて高らかに「TONIGHT IS WHAT IT MEANS TO BE YOUNG」を歌うダイアン・レインの映像と音楽は鮮やかだった。
その記憶があるから、ダイアン・レインという女優のその後が気になっていたのだろう。だが、その後のダイアン・レインは長い沈潜の時期に入る。20代前半の3年間は、まったく出演作がない。その後、「元は有名女優だったんだけどね」的な仕事しかできなくなる。官能的な役にも挑戦したが、作品には恵まれない。
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「ブラックサイト」に犯人がヒロインの娘を狙っていると思わせるシーンがある。それを知ったヒロインは、狂気のような振る舞いで娘を捜す。子供を思う母親の気持ちを見事に表現していた。ダイアン・レインにも、最初の夫クリストファー・ランバートとの間に娘がいるらしい。13歳だったローレンは、母になり二度の結婚を経て、大女優の貫禄を得た。そういうことだろう。
【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
8月も終わり、9月になりました。この連載は11年目に入っています。11年も経てば、いろんな変化があります。仕事も家庭も…。そんな変化が書くものにも出ているのでしょうか。先日、ある人に「歳を重ねて、諦めの境地に入ったのでは…」といったようなことを言われ、そんな要素もあるのだろうなあと納得しました。
●305回までのコラムをまとめた二巻本「映画がなければ生きていけない1999-2002」「映画がなければ生きていけない2003-2006」が第25回日本冒険小説協会特別賞「最優秀映画コラム賞」を受賞しました。
< http://www.bookdom.net/suiyosha/1400yomim/1429ei1999.html
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受賞風景
< http://homepage1.nifty.com/buff/2007zen.htm
>
< http://buff.cocolog-nifty.com/buff/2007/04/post_3567.html
>

- 映画がなければ生きていけない 1999‐2002
- 水曜社 2006-12-23
- おすすめ平均
特に40歳以上の酸いも甘いも経験した映画ファンには是非!
ちびちび、の愉悦!
「ぼやき」という名の愛
第25回日本冒険小説協会 最優秀映画コラム賞
すばらしい本です。
by G-Tools , 2009/09/04