まにまにころころ[16]マンガとアニメの話、のつもりが、マンガ雑誌の話
── 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito ──

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こんにちは、前々回くらいだったか、森和恵さんとマンガ談義でもってなこと書いたら、実現することになりました。来月に予定していますのでお楽しみに。誰より楽しみにしてるのは私ですが。(笑)

森和恵さんとはかれこれ10年近いお付き合いで、お仕事関係よりも、マンガの貸し借りしたり、アニソン縛りのカラオケに行ったりと、マンガ・アニメ関係での交流の方が盛んです......って、あまりそのあたりを勝手にあれこれ書くと「イメージが!」と怒られそうなので、来月まで取っておきます。(笑)




◎──マンガとアニメの話

日本でマンガの話をする上で、避けて通れないのはアニメの話。ま、そもそも避ける気なんてさらさらありませんけれど。昔は「テレビマンガ」なんて呼ばれたり、アニメはしばしばマンガと同一視されてきました。鉄腕アトムにまでさかのぼらなくても、今も昔も、アニメはマンガが原作のものが圧倒的多数。

試しに、知ってるアニメのタイトルを、思いつくままに挙げてみてください。おそらくその半数くらいはマンガが原作なんじゃないでしょうか。ワンピースやナルトは、アニメよりマンガのイメージの方が強そうですが、サザエさんもドラえもんもクレヨンしんちゃんも、名探偵コナンもけいおん!もマンガ原作。

ポケモンやイナズマイレブンはゲーム原作、プリキュア、エヴァンゲリオン、ガンダム、マクロスはアニメオリジナル。アンパンマンは絵本が原作。あと、ライトノベルなどの小説原作もありますが、やはりマンガ原作が圧倒的ですね。

◎──マンガ原作のアニメが多いわけ

見出し付けて書くまでもなく、その親和性の高さにつきそうですが。ストーリーと絵が既にあるわけですから、あとは音入れて動かすだけ、と。でもそれだけではなくて、マンガはアニメ化される前に、幾重もの厳しいふるいにかけられているので、人気も読みやすいんですよね。

わざわざアニメ化しようってことなので、少しでもコケる可能性は減らしておきたい。そこでマンガはとってもアニメ原作に向いているんです。特に雑誌連載されているマンガは。

◎──マンガ雑誌の果たす役割

「週刊少年ジャンプ」の名前を知らない人は千人に1人もいないと思いますが、私たちはジャンプやマガジン、サンデーといった「マンガ雑誌」の存在を、何の疑問もなく受け入れています。マンガは週刊や月刊の雑誌で連載され、それが単行本にまとめられて、と。

雑誌の読者アンケートで評判が悪いと、容赦なく打ち切られるジャンプのシステムは有名ですが、どんな雑誌でも、雑誌掲載の時点で作品の人気はチェックされます。それを元に、続いたり打ち切られたり、ストーリーの方向修正が行われたり、人気キャラクターの扱いがよくなったり。

いくつもの作品をまとめて市場調査にかけているようなものですね、しかも、お金をもらって。このマンガ雑誌のシステムは、おそらく日本特有のもので、日本のマンガ文化の根幹です。

マンガ雑誌の果たす役割はマーケティングの機能だけではなく、漫画家の育成にも大きな役割を果たしています。アシスタントの制度や編集の存在も大きいですが、それよりなにより、「作品発表の場」としての役割が大きい。

例えば、週刊少年ジャンプでいえば、ピーク時で650万部、雑誌が売れなくなった今でもなお280万部が毎週発行されています。これがどういうことかというと、たとえどんなに無名の新人も、週刊少年ジャンプに掲載されれば、超人気作のナルトやワンピースと同数の280万人がとりあえず掲載誌を手に取ってくれる、ということ。

読まれるかどうかは別問題ですが、10人に1人でも読んでくれれば28万人、100人に1人でも3万人近くが目にするわけです。聞いたこともない作家の作品を。しかもその一部はアンケートで評価までしてくれる。

人気作の例として名前を挙げてきた『NARUTO -ナルト-』や『ONE PIECE』は、残念ながら(?)初連載からメガヒットという例外作品ですが、同じジャンプ作品である『テニスの王子様』(全42巻)には『COOL-RENTAL BODY GUARD-』(全3巻)、『Bleach』(既刊56巻)には『ZOMBIEPOWDER.』(全4巻)という、代表作以前の地味な連載作品が存在しました。

また、多くの場合、連載の前には、単発の読み切り作品という形で掲載されたりします。先に「マーケティングの機能だけではなく」と書いたもののこれらもマーケティング活動ですが、このおかげで、新人作家の作品も広く世に問うことができ、それはマーケティングだけでなく、未来の人気作家の育成、発掘にも一役買っているんです。

◎──転換期

そんなマンガ雑誌ですが、今、大きな転換期を迎えています。ひと言で言えば、売れなくなってきたんですね。まあ、売れなくなってきたのは結構前からなのですが、さらに冷え込む兆しというか。

原因のひとつは娯楽の多様化で、ピンポイントでしか時間もお金も使う余裕がなくなってきていること。雑誌で色々読むんじゃなく、興味あるものだけ単行本で買えばいいやって感じになってる。

さらに、追い打ちをかけるのが電子書籍などの存在。これまで以上に、さらにピンポイントで入手可能になってくる感じ。これらは先行して音楽業界が直面している問題でもあるんですが、その音楽業界も打開策は見いだせていない。

売上げだけの話で言えば、CDが売れない分iTunesなどで補っていこうって流れですが、それってキャッチーな曲しか聴いてもらえなくなるんですよね。これまでアルバムに入ってたような、冒険というか捨て曲みたいなのが、じわじわ人気になって、いつの間にか代表作の仲間入りしてたっていうようなことが、生まれなくなってしまう。全曲シングルA面みたいになる。

でも音楽の場合は、アルバム曲もシングル曲も、お財布は一緒なので、とりあえずは売れればまあ目先の問題はないわけですが、マンガの場合は、既に売れてる作家以外が淘汰されかねない事態に。悩ましい話です。

◎──試行錯誤

転換期というのは、端から見ている分にはある意味面白い時代で、様々な形で試行錯誤がなされています。

これまでマンガ雑誌が担っていた役割の一部を、Web雑誌という形に置き換えられないかとの試みも見られます。また、赤松健や佐藤秀峰のように、出版社とは別での動きを独自に行う作家も現れています。

まだまだ当分は試行も錯誤も続きそうですが、描き手にとっても読み手にとっても幸せな形が早く生まれることを願います。そろそろ生まれてくれないと、試行錯誤する体力もなくなってしまうと思うので。

・となりのヤングジャンプ
< http://tonarinoyj.jp/
>

・週刊ヤングジャンプWeb連載
< http://youngjump.jp/web_comic/
>

・裏サンデー
< http://urasunday.com/
>

・「裏サンデー」が大ピンチ、赤字で閉鎖の可能性 「......マジです」
< http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1211/16/news072.html
>

・Jコミ
< http://www.j-comi.jp/
>

・「ラブひな」赤松健さん、無料漫画サイト経営にかける「夢」
< http://ascii.jp/elem/000/000/573/573268/
>

・漫画onWeb
< http://mangaonweb.com/welcome.do
>

・「ブラックジャックによろしく」が2次利用フリーに
< http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1208/20/news098.html
>

◎──あれ?

アニメの話をするつもりが、マンガ雑誌の話に終始してしまいました。いつも最後はこんなこと書いてる気がしますが、毎度毎度行き当たりばったりで書いてちゃダメですね......いや、最初はそれなり考えてたんです。

アニメを支えるマンガ原作、そのマンガを支える仕組み、そんな感じであれこれ書いていこうと。マンガ雑誌の話、同人誌マーケットの話、PixivなどWeb媒体の話なんかを書いていこうかなって。

マンガを支える仕組みがしっかりしているから、安定的にアニメに原作を共有できる。アニメ化されることで原作も大幅に売上げが伸びて、出版社も原作者も潤う。ハッピーな循環がそこにある、なんてとこで、いい感じにまとめようかと思って書きはじめたものの、マンガ雑誌の話を書いてる時点で、いやいやマンガ雑誌は今ピンチを迎えてるじゃんと、どんどん話が横道に逸れていき、ころころ転がってしまって。

回を重ねる毎に私の適当な性格が露呈していきますけど、私の性格が改善されるのを待たないで、どうか諦めてこのいい加減さに慣れてください。あ、諦めて見捨てるのはナシで!

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< https://www.facebook.com/korowan
>
< https://www.facebook.com/caputllc
>

・アニメの話(番外編)
これ、すごいなー。メルセデスのアニメ広告。
< http://promotion.yahoo.co.jp/a_class/
>

・イベント紹介(その1)【東京・大阪】
12月1日に東京で第31回WebSig会議開催!
「創り手が意識すべきタブレット,ユーザが使い始めるタブレット」
< http://websig247.jp/meeting/31/000254.html
>

それを大阪で中継します!
< http://kokucheese.com/event/index/62667/
>

・イベント紹介(その2)【東京・大阪】

12月3日に東京、12月6日に大阪で、アプリクリエイターのためのWindows8パーティ、「8nights」が開催されます!
< http://www.microsoft.com/ja-jp/events/8nights/default.aspx
>