まにまにころころ[33]ひとりずつひとつ
── 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito ──

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こんにちわん、コロこと川合です。「名は体を表す」という言葉がありますが、名付けられると、その名前に引っ張られるということは確かにありますよね。本名でもあだ名でも。

「どこか犬っぽい」という理由で、コロという犬っぽいあだ名をつけられた私も、なんとなくそれ以降、その呼び名に引っ張られてる気がします。周囲が「確かに犬っぽい。コロっぽい」と納得したというのも、定着した一因だと思います。名前をつけるって、面白い。

そんなこんなで、今日は「名前」の話。




◎──DQNネーム(キラキラネーム)

どこまで本当の話なのか分かりませんが、自分の子どもに、個性的というか、とんでもない名前をつける人が最近増えているそうで。「変わった名前」は昔からあったし、「読みにくい名前」だって昔からありました。読みにくい、で言えば、私の「和史(かずひと)」だって、まず読んでもらえません。

でもそんなレベルでなく、「読みようがない当て字」や、とてもじゃないけど子どものことを思ってつけたとは思えない名前が、増えているそうです。

それらは「DQNネーム(ドキュンネーム)」「キラキラネーム」と呼ばれるそうですが、実例をいくつか挙げてみましょうか。役所に確認したり、実際に私が出会ったわけではないので、その実在は定かじゃないですが。

◎──当て字系(連想)

・星音(きらり)
まあ、意図するところは分からなくもないです。私の中ではギリギリセーフ。

・花束(ぶうけ)
さすがに無理があるでしょう。トスしていいですか。

・美白(みるく)
......コメントに困ります。漢字を無視すれば、かわいい響きですけども。

・勇気(ふぁいと)
ぶうけちゃんと同系統ですね。名前に負けず、強く生きて欲しい。

連想ゲームの世界ですね。見聞きした中で、比較的まともなのを選びました。ちょっとこれはと、思わず眉をひそめてしまうものも挙げてみましょうか。

・六面(だいす)
ぶうけちゃん系の亜種。ひねってきました。

・仏王(るい)
いや、ちょっと、名前でボケてってお題でも与えられたんですか。

・波波波(さんば)
ダジャレ?

まだまだありますが、次に行きましょう。

◎──当て字系(音ありき)

・帝愛(てぃあら)
音の響きに対して、ちょっと漢字がものものし過ぎやしませんか。

・沙羅汰(さらだ)
これまた、なんでその漢字をチョイスした。いやそれ以前にサラダて。

・覇安威(はあい)
返事っぽいかわいらしさに反して、なんという強面な。

・星影夢(ぽえむ)
確かに音はかわいい。けど、なんかちょっと惜しい。

音ありきのこのタイプは、夜露死苦(ヨロシク)というような暴走族の落書きに通ずるものが。そもそもの「音」が良い響きなら、あとは漢字の選択次第で、良い名前になると思うんですけどね。いい漢字がないなら、仮名でいいのに。

◎──神話や宗教を拗らせた系

・美神(びしぬ)
ヒンドゥ教の神様ヴィシュヌ神からですね。漢字の選択も読みも中途半端。

・大穴(だいあな)
もっと他に選べる漢字があったでしょうに。漢字次第では許せる名前。

・不可思議光(ふかしぎこう)
寿限無を思い出す。意味はともかく、名前としてはちょっときつくないですか。いっそ「阿弥陀如来」と名付ければよかったのに......いや、よくないか。

・約書亜紀(よしゅあき)
なんで「ヨシュア記」という本の名前をつけようと思ったのか。ヨシュアではダメだったのか。しかもなんか、漢字も微妙。

・天国(えでん)
先に挙げた連想系のうち。まだ「楽園」のほうがきれいな字面だったのに。

・金星(まあず)
間違えたのか? 意図的か? マーズは火星。金星はヴィーナス。

◎──アニメやらマンガやらの影響系

・光宙(ぴかちゅう)
キラキラネームの例として有名。本当に実在するんだろうか......

・白虹(しろっこ)
たぶん、ガンダムのあの人ですよね?

・明志石(あくしず)
たぶん、ガンダムのあの場所ですよね?

・振門体(ふるもんてぃ)
男性ストリップの話でしたっけ。

・乙女(しゃか)
聖闘士聖矢に出てくる乙女座のキャラがシャカって名前だからですね。

・慈代(じぇだい)
ジェダイの語源は「時代」だと知った上でひねってきたんでしょうけど。

・新一(こなん)
正体バラしちゃだめーーーーっ。

・ハム太郎(はむたろう)
そうそう、ひねらずに直球がいい......とは言い切れない例がここに。

◎──悪意を感じる系(もう個別コメントは省きます)

・戦争(せんそう)
・桜鈴(さりん)
・可梨実(かなしみ)
・明芽(あくめ)
・輝照(てろる)
・ポチ男(ぽちお)
・陽夏照(ひげき)
・羽姫芽(わきが)
・真羅(まら)
・愛歩(あほ)
・愛保(らぶほ)
・希空璃(ふぐり)

ある意味、悪意が分かりやすくて対処しやすいと言えるかも。裁判沙汰で有名になった「悪魔ちゃん」が、かわいく思えるほど。

◎──どんなつもりで名付けているのか

例示するだけでずいぶん長くなってしまいましたが、一体どんなつもりで名付けているのか理解に苦しむものが多い。冒頭でも書いたように、変わった名前というのは昔からあって、吉田兼好も徒然草で「寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は、少しも求めず、たゞ、ありのまゝに、やすく付けけるなり。この比は、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。何事も、珍しき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ」と、苦言を呈していたりする。でもおそらく、次元が違う。

ひどい名前というのも、釈迦牟尼が生まれてきた息子に、出家の邪魔だと障碍(ラーフラ)と名付けたって説もある。でも伝承レベルの話。

個性的な名前を求める風潮は全世界的にあるようで、英語圏でも、お隣の中国でも増えているらしい。が、「個性的」をはき違えていると思わざるを得ない名前をみると、暗い気持ちになる。どうして奇をてらうのか。笑いを取りたいのか。「自分のため」に名前をつけてどうするのか。

「他と違うユニークな名前をつけたい」という気持ちはわかる。ならどうして、もう一歩踏み込んで、名付けられた子が困らない名前を考えられないのか。

いつからこうなってしまったのか。私が子どもの頃、グローバル社会に備えて海外でも呼ばれやすい名前にしようとか、音の響きが英語圏で悪い意味にならないように気をつけようとか、そういう話を聞くことがありました。さらに、アジア圏でも通用するよう気をつけようといった話も後々聞きました。みんな、苦心して良い名前を考えていました。それが、どこでどうこじらせたのか......

例に挙げた中にも、またキラキラネームと言われている中にも、想いが感じられる名前、ちょっとひねりすぎと思うものの許せるレベルの名前もありますが、そうでないひどい名前を見ると、他人事ながら暗い気持ちになります。それが、他人事でなく、社会的に悪影響を及ぼす危惧さえ感じます。

長々と書いておきながら、結論も意見もまとめられないのですが、それぞれがそれぞれの感想を持っていただければと、丸投げして終わりにします。

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
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ゴダイゴ「ビューティフル・ネーム」を聴きながら。