腕時計百科事典[04]腕時計の分類(時刻表示)
── 吉田貴之 ──

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今回は腕時計を時刻表示部分のデザインで分類してみます。

「時計の絵を描いてください」と言われた場合、多くの人は針が三本ある時計を描こうとするでしょう。これがアナログ表示の時計です。

一方、G-SHOCKのように、時刻を数字で表すデジタル表示の時計もあります。時刻の表示方法は腕時計のデザインや用途に大きく影響します。




●アナログ表示

機械式時計全盛の時代には、ほとんどの腕時計がこの表示方式を採用していました。文字盤中心から伸びる「時針」と「分針」で時刻を表現します。

これに三番目の針「秒針」が加わることも多いですが、時針、分針と同じ位置に秒針が取り付けられたのは、機械式時計の誕生からしばらく経ってからのことです。

秒針が実装できた当初は、スモールセコンド(文字盤6時位置の小さな秒針)を採用していた時計が主流でした。アナログ表示の時計は現在の時刻と目標とする時刻の差や、時間の経過度合いなどがわかりやすく、実用性を評価されることが多いです。

●多針アナログ表示

時針、分針、秒針以外にも、針がついた腕時計があるのをご存じでしょうか。いわゆる「クロノグラフ」がそれにあたります。

クロノグラフとはストップウオッチ機能のついた腕時計ことですが、プッシャー(押しボタン)によってスタート、ストップ、リセットの操作を行うことができ、任意の時間を切り取ることができます。

クロノグラフでは、秒針の代わりに「クロノグラフ針」が搭載されていることが多いです。また、文字盤の各所に「積算計」を備えており、30分や1時間など一定の時間が経過する毎にで目盛りを進めることで、長時間の経過を目視することが可能となります。

現代では、クロノグラフの機能的な部分よりも、針が多いことによるメカニカルで男性的なデザインの方に注目が集まります。

●デジタル表示

アナログ表示が針と目盛りで時刻を表示するのに対し、デジタル表示は数字を文字盤に示すことで時刻を表現します。

デジタル表示の時計と言えば、G-SHOCKのように液晶を使ったものを想像しますが、それ以外の機構を使ったものもいくつかあります。

実は、機械式時計の時代にもデジタル表示の時計がありました。針を回転させる代わりに数字の描かれた文字盤を回転させ、それを小窓から表示させることでデジタル表示を実現していました。

他にも、これは腕時計ではないですが、樹脂の板に数字を描き、それをパタパタと繰り出すタイプのものや、ボタンを押したタイミングだけLEDで時刻を映し出すタイプのデジタル時計もありました。

デジタル表示の時計に共通するのは「一目で時刻がわかりやすい」ことです。

●アナデジ

その名前の通り、アナログとデジタルを組み合わせた表示方式です。組み合わせたと言っても、単純に同じ文字盤上に並べているだけですが、デジタルの良いところとアナログの良いところを併せ持っています。

アナログ、デジタルそれぞれのモジュール(時計の機械部分)を小さくすることで実現できました。デジアナ、ということもあるようです。

●機能と表示方法

腕時計を選ぶ際に「デジタル表示」「アナログ表示」の言葉を意識することはほとんどないように思います。

見た目の好みで選ぶか、その用途から仕事/フォーマル用=アナログ表示、運動/カジュアル用=デジタル表示、を選ぶことが多いのが現状でしょう。これは、腕時計の用途や機能が、デザインに上手く落とし込まれている証拠に他なりません。

最近はアナログ表示、デジタル表示以外の表示方法に挑戦する腕時計も多くありますが、それが新しい定番になることはありません。このことからも、この二つの表示方法が完成されたものであることをうかがい知ることが出来ます。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。