腕時計百科事典[17]腕時計のブランド(ジラール・ペルゴ)
── 吉田貴之 ──

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腕時計業界を牽引するブランドのひとつである、「ジラール・ペルゴ」の紹介です。ジラール・ペルゴは優れた市場予測能力を持っており、なおかつその予測されたトレンドを開発という形で実現できる、確かな技術力をもつ時計メーカーです。

●ブランドの興り

1791年、19歳の時計職人ジャン・フランソワ・ボットが、ジュネーヴに時計工房を設立。これがジラール・ペルゴの始まりとなりました。

創業者ジャン・フランソワ・ボットは有能な時計職人として名を馳せただけでなく、近代的な生産ラインを確立するなど、経営者としての才覚も優れていました。ジラール・ペルゴは創業当初から多くの名士を顧客に抱えており、安定した経営を続けていました。




●創業者の死後

ジャンの死後、息子や甥に経営が引き継がれましたが、会社は1906年にコンスタン・ジラール・ペルゴへと譲渡されました。

コンスタンはラ・ショード・フォンの有能な時計職人で、パリ万博で二度の金賞を受賞した傑作「スリー・ピンク・ゴールド・ブリッジ付トゥールビヨン」を生み出した人物です。

彼の参加により、現在の「技術力のジラール・ペルゴ」が誕生したといえるでしょう。

●技術とデザインの調和

ジラール・ペルゴは、本格的な腕時計を世界で初めて量産したスイス屈指のマニュファクチュール(自社一貫生産できる時計メーカー)です。

企業哲学として、デザインへの情熱と熟練した技術との調和と両立を目指しており、様々なサイズのコンプリケーションやムーブメントの生産など、研究開発に力を注いでいます。

近年は、トゥールビヨンやミニッツ・リピーターなどを次々とラインナップに加え、機械式複雑時計を中心に展開できる、たしかな技術力をもったブランドへと成長していきました。

●クオーツへの取り組み

複雑時計を得意とするブランドでありながら、スイスで初めてクオーツ腕時計の工場生産を実施しました。1970年のことです。

この時、ジラール・ペルゴが決定した32,687ヘルツの周波数は、現在でもクオーツ腕時計の世界規格として用いられています。

その後も、クオーツ全盛期に機械式時計の復活に向けての準備を着々と進め、90年代になって機械式時計ブームが訪れると、往年の名機の復刻モデルをリリースするなど、常に時流の一歩先を行く先見の明を持つブランドです。

●自動車業界との提携

フィアットの元レーサーがデザインしたGP7000のヒットにはじまり、イタリアの名門フェラーリとのライセンス契約、BMWへの後援など、自動車業界とも深い関わりがみられるのも特徴です。

●時計業界の再編とOEM

2011年にはフランスのピノー・プランタン・ルドゥートグループの傘下となり、組織改編によりケリンググループのブランドのひとつとなりました。同じグループのファッション企業にも時計のムーブメントを提供しており、技術への追求をより深めています。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。