コロこと川合です。参院選の特番で昨日の『真田丸』は放送時間が変更され、気づかずうっかり冒頭見逃してしまい軽くへこんでいます……選挙め!
今回のまにころは前回に引き続いて新選組の話。人々が選挙権を得るのはもう少し先の話になります。
◎──近藤勇(こんどういさみ・1834年11月9日-1868年5月17日)
まずはこの人、新選組局長、近藤さんです。多摩の百姓の三男として生まれ、15歳で天然理心流剣術道場・試衛館(試衛場)に入門。道場を継ぎ、後に同士と京に上ってという話はほとんど前回書いたので省きます。
近藤さんは三国志の関羽に憧れていたそうですけど、キャラ的には劉備ですね。なんとなく人望があって、周りに人が集まるタイプ。創作物なんかでは大抵、土方さんが汚れ役を引き受けて、近藤さんのイメージをクリーンに保つような描写があるんですが、実際はそもそも近藤さんって、汚れ仕事や権謀術数とかには疎かったんじゃないですかね。
最期、変名を使ってのこのこと新政府軍に出頭して、すぐバレて捕縛され処刑されてますし。まっすぐというか、なんというか……なお近藤さんの特技は、自分の拳を口に入れること。宴会芸か!
◎──芹沢鴨(せりざわかも・生年不明-1863年10月28日)
ひとことで言えば、ヤクザですね。任侠の世界の人でなく、今の暴力団構成員のような。暴力で商家から金を巻き上げ、飲んで、抱いて、暴れてと。もう、やりたい放題やって、暗殺されて消えた人です。
もっとも、どこまで本当かは分かりませんけどね。芹沢派はまとめて粛正され、仲間内の証言はありませんから。暴力で商家に要求を押し通したりしたことは本当としても、だいたい近藤さんも同行してたようですし。隊のリニューアルに際して、それまでの新選組の悪名をそっくり被せられたのかもしれません。
なんにせよ嫌いですけど。(笑)
だいたい、近藤、芹沢と二人、あるいは新見も加えて三人もの局長がいる組織なんてあり得ないですよね。粛正をもって初めて、ただの公募の寄せ集めから、組織として成立しうる体制になったんじゃないでしょうか。
◎──土方歳三(ひじかたとしぞう・1835年5月31日-1869年6月20日)
土方さんの歴史イコール新選組の歴史といった感があるので、ほとんど前回に書いてしまっていますね。鬼の副長と呼ばれた、新選組の顔です。本人の顔は写真で残っていて、鬼とはほど遠いイケメンです。
漫画家の荒木飛呂彦が土方さんにそっくりというのは有名な話です。顔はともかくイメージでは、テレ朝のドラマ『新選組血風録』での村上弘明が演じる土方像が個人的にお気に入りです。かっこよかった!
実家は多摩の石田村で石田散薬なる秘薬を作る薬屋さん。イケメンなのにトゲのある乱暴者で、イバラのようだとして、バラガキと呼ばれていたそうです。
鬼の副長として、一般的に「局中法度」と呼ばれる隊規を定め守らせたとして有名です。士道に背くな、組を抜けることは許さない、勝手に金策をするな、勝手に訴訟を取り扱うな、私闘は禁止、これら守らないと切腹ね、というもの。ひとつ目の「士道ニ背キ間敷事」ってのが、なんとでも恣意的な運用ができる、優れものですね。
戊辰戦争以前の時点では、残っている記録によると、京の治安維持活動による死者よりも、隊内で粛正されての死者のほうがずっと多いとのことです。
鬼の副長土方さん、鳥羽伏見の戦いを経て、江戸から北上する頃にはずいぶん優しくなられたそうで、部下を気遣ったり、酒を振る舞ったり、最後には若い部下に故郷へのお使いを頼んで戦地から遠ざけたり。
年齢を重ねたり戦を経て、人間的に成長したんだという評価がありますが、元々根っこの部分に優しさがあったんじゃないかと思うんですよね。
新選組の形を整えるため必要に迫られ「鬼」の役割を自分に課していたんじゃないかなと。その必要が薄れるにつれて、優しい顔が出てきたんじゃないですかね。
◎──山南敬助(やまなみ/さんなんけいすけ 1833年2月5日-1865年3月20日)
「やまなみ」が一般的ですが、「さんなん」との説も。両方使ってたとの説も。ゲーム『薄桜鬼』では「さんなん」を採用していますね。だいたい「やまなみ」が使われるので、最初「さんなんさん」と聞いてもピンとこなかったです。
山南さんと言えば、優しく温厚で隊士にも町の人からも慕われて、というのがキャラとして定番ですが、突然江戸に帰ると置き手紙を残して出ていきます。もちろんそれは法度に違反するので、連れ戻して切腹させるのですが、追っ手には山南を慕っていた沖田を差し向けて穏便に連れ戻し、切腹までの間には、周りは改めての脱走を勧めていたそうです。
伊東が入隊して立場を追われたという話もありますが、それよりも、新選組が、なんていうか、強引ながらも次第に「ちゃんとした組織」になっていくことに、耐えられなくなったんじゃないでしょうか。
気の合う剣術仲間の寄り合いから、大層な法度を掲げて、身内もどんどん粛正して引き締めるピリピリした隊への、そんな変化に付き合いきれなかったんじゃないかと想像。
なんにしても、消えていく儚さもあいまって、人気の高い人です。
◎──沖田総司(おきたそうじ 1844年-1868年7月19日)
儚さで人気が高いと言えばこの人、沖田総司。昔はよく「そうし」と濁らない呼び方をされることが多かったように思うんですが、最近は「そうじ」で統一されていますね。特定されたんでしょうか。
若い、強い、儚いと三拍子揃った人気者。近所の子どもたちとよく遊んでやる優しさと、敵をざくざく斬っていく冷徹な鋭利さが同居してる感じ。
有名なのは労咳に冒されて病床での晩年、黒猫を斬ろうとして斬られず、衰えに嘆いたという話ですが、黒猫にしちゃいい迷惑。今では黒猫ってなんか不吉だったり荷物届けたりするイメージしかありませんが、昔はむしろ縁起物で。
特に黒猫を飼うと労咳が治るとの迷信もあったそうなので、病床の沖田の側に黒猫がいたんでしょうね。黒猫、恋煩いにも効いたそうですよ。万病に効くね。
新選組を題材にした作品ではとにかく主役になりやすいキャラですが、新選組の最期には立ち会えないので、途中で土方さんに主役の座を明け渡すか、最初から土方さんを主役にして、弟分として描かれることが多いです。で、大抵、美少年として描かれます。女性として描かれることも。
なお新選組のフィクションでは主役キャラでも、歴史の流れとしては傍流です。だからこそ、自由自在に脚色して描けるんですよね。色んな作品で色んな沖田が描かれているので、ひとくちに沖田総司ファンと言っても、どの作品の沖田が好きなのか、意見が分かれるところじゃないでしょうか。
◎──永倉新八(ながくらしんぱち 1839年5月23日-1915年1月5日)
激動の中を生き抜いて、後に新選組の回想録を出版した人です。賊軍の代表格として蔑まれていた新選組の名誉回復に努め、協力者を募って、墓や碑を建立しました。永倉が書いた新選組の話は、ところどころ記録とは違う部分もあるようですが、思い出しながら新聞に寄稿した文章なので、記憶違いもあれば、多少の誇張などもあるでしょう。
それでも今、新選組についてあれこれ多くの話が残っているのは、永倉の功績です。永倉がいなければ、今のように新選組が多くのファンに支持されることもなかったかもしれません。
近藤さんが亡くなる少し前に、意見の相違から袂を分かっていますが、剣術の腕も立ち、近藤、土方に次いでリーダーシップも持ち合わせていたようです。
晩年は映画が好きで、よく孫と映画館に行ったらしく、ある時その帰りに数名のチンピラに囲まれたところ、ひとにらみして追い払ったというエピソードが残っています。気迫でチンピラを退けるお爺ちゃん。すごい。
◎──斉藤一(さいとうはじめ 1844年2月18日-1915年9月28日)
幕末の動乱を生き延びたもう一人の新選組幹部がこの斉藤。会津と運命を共にした後、1874年(明治7年)からは、東京で警察官となりました。西南戦争にも従軍しています。警察を退職した後は学校に勤め、永倉と同年に病没。
沖田、永倉と共に新選組随一の剣客とされる斉藤ですが、その名を一気に有名にしたのは『るろうに剣心』じゃないですかね。あれはかっこいい。
『るろうに剣心』には新選組の武田観柳斎、原田左之助から名前を取った人物も登場しますが、名前と性格上のモデルであるだけで、実在の二人とは関係がありません(名前も「武田観柳」、「相楽左之助」と、少し違う)。
◎──とりあえずこのへんで
まだまだ山崎丞、島田魁、大石鍬次郎、他にも紹介したい隊士は多いのですが、キリがないですし、とりあえずこの辺で。
最後は、もう少し新選組のことを知りたい方のために、新選組が登場する作品を紹介して終わろうと思います。山ほどあるので、ごくごく一部だけ。
○漫画・アニメ・ゲーム
『風光る』 渡辺多恵子
『新撰組異聞PEACE MAKER』 黒乃奈々絵
『アサギロ 〜浅葱狼〜』 ヒラマツミノル
『ちるらん 新撰組鎮魂歌』 梅村真也・橋本エイジ
『薄桜鬼』オトメイト(ゲームブランド)
○小説
司馬遼太郎:『新選組血風録』、『燃えよ剣』ほか。
池波正太郎:『幕末新撰組』ほか。
浅田次郎:『壬生義士伝』ほか。
○映画・テレビ
『幕末純情伝』(1991年) 薬師寺光幸監督 主演:牧瀬里穂(沖田総司)
『御法度』(1999年) 大島渚監督 主演:ビートたけし(土方歳三)ほか。
『壬生義士伝』(2003年) 滝田洋二郎監督 主演:中井貴一(吉村貫一郎)
『新選組血風録』(1998年・テレビ朝日)主演:渡哲也(近藤勇)
『新選組!』(2004年・NHK)脚本:三谷幸喜、主演:香取慎吾(近藤勇)
『新選組血風録』(2011年・NHK)主演:永井大(土方歳三)
新選組を題材にした漫画に『銀魂』を加えようか悩み、省きました(笑)
◎──次回は
次回は、未定。松下村塾、西郷隆盛、会津、坂本龍馬、そのあたりのどれかか、ぜんぜん違うか、どうするか、次回までに考えます。
こんないい加減な感じできたこの「まにころ」も、もう100回目なんですね……いつ頃からずっと歴史話になっていますが、明治初頭くらいまでで一区切り、その後は方向転換しようと思っています。でも歴史か古典ですけど。(笑)
【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
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UEFA EURO 2016、ポルトガル優勝おめでとう!