ボーム&メルシエの腕時計に共通する計算され尽くしたデザインは、確かな制作技術と綿密な設計に基づくものです。日本国内での知名度は決して高いといえるブランドはありませんが、ボーム&メルシエの、特に女性用時計の美しいデザインを見たならば、その名前をしっかりと記憶することでしょう。
●下請製造からスタート
1542年にフランシュ・コンテよりレ・ボワの村に移ってきたボーム家は、エタブリサージュと呼ばれる時計の下請製造を生業としながら、その技術と知識を継承していきました。
1830年、ルイ・ヴィクトールとピエール・ジョセフ・セレスタンの兄弟は、ボーム家の名を冠する時計製造会社を設立。
この頃のボーム時計には美しいエナメル細密画が施されました。これは当時の人々、とくに貴族の評価を集め、会社も順調に発展を遂げました。
●世界の舞台への進出
ロンドンに支店を設立すると、大英帝国全域を商圏として、会社はさらに成長します。見本市や国際フェア、コンクールにも積極的に参加し、高い評価を確固たるものとします。
1920年頃、ウィリアム・ボームが会社に参加し、ポール・メルシエとともに「ボーム&メルシエ」として再出発しました。
●女性用の腕時計
1920年代から1940年代にかけて、女性解放運動の潮流に応える形で、数多くの女性用腕時計を製造するようになりました。
これは時代の要求に沿ったビジネス展開のようにも見えますが、創業者が1870年頃、娘に懐中時計を贈った逸話などを鑑みると、もともと女性と時計の関係がより深くなっていくことを予見していたようにも思います。
●ブランドのロゴ
ボーム&メルシエは、ギリシャ文字のファイ(Φ)をブランドのロゴとしています。これは諸説ありますが、その文字の均衡したフォルムに関心を寄せていたようです。
シンプルながら研ぎ澄まされたデザイン力は、男性用時計でも十二分に発揮されており、現在のラウンドウオッチの礎ともいわれるモデルを多数輩出しています。
●突き詰められたデザイン
「何ひとつ見のがさず、最高品質の時計を製造すること」をポリシーとした時計製造は、デザインと技術のバランスの良さに優れていると言われます。
デザイン、マーケティング、製造が社内で一体となっていおり、最初のデザイン案作成から最終的なプロトタイプの制作まで、全ての段階でデザインを最大に尊重。ブランドの象徴でもある黄金分割をベースにした、完璧なバランスを求めるデザインを追求しています。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。