ウォルサムはアメリカ最古の時計メーカーです。腕時計の近代的な大量生産方式を確立した先駆けとして知られています。かつては日本でも、高級懐中時計のメーカーとしてひろく知られていました。
●創業と発展
1850年に設立された「ハワード、デイヴィス&デニスン」社が、ウォルサムの前身です。1853年には「ボストン・ウオッチ・カンパニー」に社名を変更。翌1854年にはボストン郊外のウォルサムに工場を新設。100名近い職人を抱え、週に30個という驚異的な生産能力で懐中時計を製造していました。
●経営方針の変更
しかし不況に伴い、1857年にはあっさりと倒産してしまいます。この会社を買い取ったロイヤル・E・ロビンスは、少数モデルを大量生産することで経営の効率化を図り、高級な懐中時計を高価格で販売する方針で経営状態の改善を試みました。
●さらなる経営方針の変更
南北戦争による不況を受けて、一転して廉価な懐中時計の製造に注力します。これが兵士にうけ、会社の経営はひとまずの安定期を迎えました。時期は異なりますが、アブラハム・リンカーンや川端康成もウォルサムを愛用していたことで知られます。
●社名変更とモデルの多様化
1885年に社名を「アメリカン・ウォルサム・ウオッチ・カンパニー」と改名し、翌1886年に社長に就任したE・C・フィッチにより消費者ニーズに応えてモデルを多様化し、会社は成長期を迎えます。1906年には「ウォルサム・ウオッチ・カンパニー」に改称します。
●名機「レディ・ウォルサム」
1912年には同社としてははじめての婦人用腕時計「レディ・ウォルサム」を発表し、女性のファッションに一石を投じました。この頃がウォルサムが最も輝いた時期と言えるでしょう。
●現在まで
残念ながら、ウォルサム社は1957年に解散し、一般向け時計分野から撤退しています。そのため、特に日本国内においては流通数が大きく減少し、稀少な時計ブランドとなっています。日本では平和堂貿易が取り扱うようになりましたが、その平和堂貿易も2016年10月に自己破産を申請しています。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。