腕時計百科事典[28]腕時計のブランド(タカノ)
── 吉田貴之 ──

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タカノはかつて存在した日本の時計ブランドです。腕時計を製造していたのはわずか5年弱という短い期間ではあるものの、インパクトのある時計を製造していたので、今でも根強いファンが多いブランドです。

●ブランドの興り

タカノは「高野精密工業」による時計ブランドです。1931年、「高野時計金属品製作所」が設立されたのがブランドのはじまりです。「高野精密工業」として分社した後、1956年頃から腕時計の製造を開始しています。

1957年にはハミルトン社と技術提携するなど、新参時計メーカーらしいフットワークの軽い経営が特徴です。




●シンプルデザイン

1957年には同社発のオリジナル時計である「200シリーズ」をリリースしました。後述のタカノシャトーもそうですが、タカノの時計は非常にシンプルなデザインが特徴です。今見ても秀逸と思えるデザインは、当時のデザイン思想がしっかりしていたことの証です。

●タカノシャトーという名機

タカノを代表する時計と言えば「タカノシャトー」でしょう。タカノシャトーは、当時(1960年)としては世界で最も薄いとされた、手巻き式腕時計です。厚みがわずか3.5mmという、現在でも薄い部類に属するムーブメントを開発したのです。

●伊勢湾台風

タカノシャトー登場の前年、1959年に紀伊半島から東海地方をおそった伊勢湾台風。これにより、高野精密工業の工場は甚大な被害を被りました。残念ながら、このときに受けた被害から立ち直ることは出来なかったようです。

●リコーの傘下に

1962年にはリコー社の傘下となりました。その後は、当初技術提携の形で協力関係にあったハミルトン社と合弁会社をつくるなど、前向きな時計製造の気配は見せるものの、「タカノ」のブランド名を持った時計が製造されることはありませんでした。

●復刻版の人気

機械式時計ブームに沸く1998年、リコー・エレメックスより「タカノシャトー1960」が復刻販売されました。これは非常に人気を集め、新しい時計ファン達にもタカノの名を刻みつけました。

規模は小さいながら、現在もリコー名義で個性的な時計の製造が続けられています。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。