腕時計百科事典[32]腕時計のブランド(ランゲ&ゾーネ)
── 吉田貴之 ──

投稿:  著者:



ランゲ&ゾーネはドイツの時計ブランドです。ドイツのマイスターによる伝統的な時計製作が特徴で、高級時計メーカーとしてひろく知られており、ムーブメントも含め自社での一貫生産が出来る「マニファクチュール」でもあります。

●ブランドの興り

ブランド名「ランゲ&ゾーネ」は1868年に誕生しました。しかし、会社のルーツはもう少しだけ遡ることが出来るようです。

1830年、フェルディナント・アドルフ・ランゲは当時著名だった時計師ヨハン・フリードリヒ・グートケスに弟子入りし、時計の技術を学び始めました。1837年からは国を飛び出してフランスやスイス、イギリスに出向き、各国の時計製造の手法を学びます。





●街とともに

ザクセン王国(ドイツ)で宮廷時計師をつとめるようになったアドルフ・ランゲでしたが、ザクセン王室の意向の元、銀資源の枯渇に悩む地域の再興のために工房をグラスヒュッテに移しました。1845年のことです。

その際、連れてきた見習い工が成長し、部品工房として独立していくにつれて、グラスヒュッテは時計産業をリード出来る時計の聖地へと変貌していきました。

●ブランドの消失

最高水準の技術で時計製造を行ってきたランゲ&ゾーネは、程なくして世界中から高い評価をうけることになります。しかし、18世紀になると、世界恐慌と大戦の影がランゲ&ゾーネを覆うことになります。

第一次大戦はこれまで蓄えた資金とブランド力でなんとか乗り越えることが出来ましたが、第二次大戦では軍需工場とされたことで連合軍の攻撃対象となってしまい、空襲の結果工房は焼失してしまいます。

●IWCとの接近

さらに、1948年には設備や資産を東ドイツ政府に接収され、ランゲ一家は西ドイツに亡命することになってしまいました。1960年代には、ヴァルター・ランゲ(4代目)がIWC社に接近することで会社の再興を試みますが、60年代後半に起こったクオーツショックによってその夢は絶たれてしまいました。

●復興

それからしばらくは目立った動きがありませんでしたが、1990年になって東西ドイツが統一され、ようやく「ランゲ&ゾーネ」のブランドが再度登録されることとなりました。

1994年には第1号のコレクションとして「ランゲ1」「トゥールビヨンプール・ル・メリット」「アーケード」「サクソニア」の4種類を発表しました。2000年には90年代に再建を支援してくれたリシュモングループの傘下に加わり、経営を安定化。現在に至ります。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
http://www.idia.jp/


兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。