腕時計百科事典[36]腕時計の歴史(機械式時計)
── 吉田貴之 ──

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自然の変化や自然原理を利用した原始的な時計が普及すると、「いつでもどこでも時刻を知りたい」という要求が高まってきました。

これを解決したのが機械式時計です。歯車を組み合わせて時間の変化を計測、表現するという、まさに「発明」が行われました。




●機械式時計の誕生

13世紀頃、「おもり」を利用した初期の機械式時計「重錘時計」が発明されます。砂時計や水時計と同様、地球の重力が動力源です。

初期の時計は個人が所有する物ではなく、公的な場所で使用され、それを市民に伝達する方法で利用していました。

「重錘時計」も同様に、塔の上部に取り付けられることで、街のどこからでも見ることができました。同時に、塔の先端からおもりを長く「落とす」ことができ、結果として長時間使用することができるという利点がありました。

重錘時計は調速機として棒テンプ、冠型脱進機をそなえていましたが、日差(一日の時刻のずれ)が約一時間前後ありました。そのため分針は備えておらず、時針のみで時刻を表示していました。

●機械式時計の進化

15世紀末にペーター・ヘンライン(ドイツ)が動力ゼンマイを発明し、これを時計の動力として用いるようになりました。

その後、17世紀半ばにはクリスチャン・ホイヘンス(オランダ)が「振り子の等時性」を利用することで調速機を進化させ、1673年にはウィリアム・クレメント(ドイツ)が「アンクル型脱進機」を、またホイヘンスが「ヒゲゼンマイを採用した円テンプ」を発明し、機械式時計の小型化がより進みました。

●時計技術の完成と時計の普及

アブラアン・ルイ・ブレゲ(スイス)などにより進化を遂げた機械式時計は、その後人工ルビーの発明や合金技術の発展に伴い、ほぼ現在の機械式時計と変わらない姿となりました。

それ以降、各メーカーは精度の向上と小型化に加え、生産効率、販売効率の向上に注力しました。

●ジュネーブ地域の時計産業

中世ヨーロッパではドイツ、フランス、イタリア、イギリスなどほぼ同じ時期に時計産業が起こりましたが、当時スイスは時計産業が盛んではありませんでした。

しかしその後、ジュネーブにおいて16世紀に行われた宗教改革により、職を追われた宝石職人が時計職人に転じ、また他地域からも大量の職人がジュネーブに流れ込んできたことをきっかけに時計産業の中心地となったといわれます。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。