腕時計百科事典[41]腕時計のメンテナンス(ケースと風防)
── 吉田貴之 ──

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今回からは腕時計のメンテナンスについてまとめてみます。ケースや風防など、腕時計の外装部分に起こりうる故障やキズについての対処方法です。愛着のある腕時計は自分でメンテナンスしたいところですが、本来は職人が行う作業です。あくまでも自己責任でやってみてください。





●ケースの汚れ

・黒い汚れが付着した

腕時計は使用後、乾いた布で拭いてから保管することが取り扱いの基本ですが、これを怠ると汗や埃が固着して、腕時計に蓄積することがあります。

多くは乾いた布で拭くことで取り除けますが、取れない場合は水で濡らし固く絞った布で拭きあげます。それでも落ちない場合は柔らかい歯ブラシを使って、丁寧に汚れを取り除きましょう。

・水では落とせない汚れが付着した

油性の汚れは水で落とすことが出来ません。ベンジンやアルコールなどの油性の液体で汚れを落とします。

この際、風防などのプラスチック部分、革ベルトなどに油性の液体が付着すると、変形や変色することがあるので注意が必要です。

また、ミネラルガラスがアルコールに触れるとヒビや割れの原因となるので、腕時計の素材を理解しておくことは大切です。

●ケースのキズ

・薄い線のようなキズがついた

鏡面仕上げが施されたステンレススチールのケースは、金属用の研磨剤を用いて研磨することで、大抵のキズを取り除くことができます。また金などの比較的やわらかい素材の場合も、専用の研磨剤でキズを落とすことが出来ます。

・ヘアラインを消してしまった

使用していて、またキズを取り除こうと研磨した際に、本来あったヘアラインが消えてしまった場合、市販の「ナイロンたわし」を使うことで、ある程度それらしく修復することが出来ます。

また、ヘアライン仕上げにできる専用の研磨用品も市販されています。いずれにせよ、鏡面仕上げとの境界の処理などには、専用の器具や熟練した技術が必要です。

・裏蓋を開けるのに失敗した

適切な道具と方法を用いずに裏蓋を開けると、裏蓋に致命的なキズが付くことがあります。特に防水性能のある腕時計の場合、裏蓋の開閉は力の加わる作業のため、キズの深さ、大きさは深刻でしょう。

素材によってはキズ取りが出来ない場合もあり、部品の交換でしか対応できません。裏蓋の開閉は出来る限り専門の時計修理店などに依頼する方が無難です。

●ケースの錆・腐蝕

・裏蓋に小さな穴がある

ステンレススチールは耐食性に優れた素材ですが、長期の使用で腐蝕することもあります。薄い穴であれば周囲ごと研磨することで見えなくすることも出来ますが、深い穴や抉れの場合は、市販の金属用パテで埋めるのもひとつの解決手段です。

・錆が発生した

金属の大敵である錆は、ケースの内部やケースと裏蓋との隙間で発生することが多いようです。表面に付いた薄い錆は研磨で取り除けますが、錆の浸食が深い場合はケースや裏蓋を交換する必要があります。

●風防のキズ

・プラスチック風防のキズ

プラスチック風防についた小さなキズは、研磨で取り除くことが出来ます。大きなキズも目の細かさの異なるサンドペーパーを段階的に用いて磨いた後、プラスチック用のコンパウンドで磨くと薄くすることができます。

・プラスチック風防の劣化

プラスチック風防は、経年により劣化することがあります。表面以外に同心円状の輪が見えたり、ヒビや収縮、また変色が発生したら、交換のタイミングと考えて良いでしょう。交換を依頼する修理店、純正部品かどうかにもよりますが、数千円で交換が可能です。

・ガラス風防のキズ

ガラス風防はキズが付きにくいですが、これは同時にキズを簡単に落とすことが出来ないことを意味しています。メーカーや修理店などでも、多くは交換で対応するようです。

ガラス用のキズ取り剤も市販されていますが、実際の施術は大変な作業となるので、費用、仕上がり、手間、時間などを総合的に判断して実施するのがよいでしょう。

・ガラス風防の欠け

ガラス風防が欠けた場合、そこから水などの滲入の可能性があると同時に、その箇所からさらに大きな破損に発展する可能性もありますので、早めに交換することをおすすめします。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。