コロこと川合です。いつの間にか11月。この土日は、大阪南港ATCで子ども向けワークショップをしていました。
子供たちにスマホでコマ撮りアニメを作ってもらってたんですが、色んな子がいて、色んな家族があって、面白かったです。
まあそれにしても、お父さんお母さんは大変だなと。ほとんどのシーンにおいて、言うことを聞かない自由気ままな子どもばかり。端から見てる分には面白いんですけどね。よくこの自由人を連れて休日にお出かけする気になるもんだなと、親の偉大さを思い知りました。
孫子だって、自由気ままで言うこと聞かない相手を御するのは無理じゃないかと思うんですが、そこはさすが孫先生、ふざけてばかりで指示を聞かないでいる王の寵姫たちを使ってのデモンストレーションでも力を発揮。見事に、まとめあげました。
王様:「寵姫と女官でも軍事調練できる?」
孫子:「できますよ」
王様:「やってみて」
孫子:「じゃあ、王のかわいがってる寵姫ふたりを隊長にしてやってみますね」
王様:「無理だと思うよ」
孫子:「はい隊長の後ろに整列」
寵姫:「整列だってー」
女官:「だりぃーっすよー」
孫子:「ドラの合図で動け」
寵姫:「ドラだって、まじウケるー」
ドラ:「どーん」
女官:「きゃははははは」
孫子:「指示が理解できなかったのかな、もう一度説明するからね」
寵姫:「この戟って武器、ヤバくね? ちょーウケるー」
孫子:「はいじゃあ二回目ー」
ドラ:「どーんどーん」
女官:「きゃははははは」
王様:「ほら、無理だって」
孫子:「説明したのにできないのは、隊長の責任ね。隊長ふたり、軍紀違反で斬首」
寵姫:「斬首だって、まじウケるー」
王様:「冗談きついよー」
孫子:「いや、マジ斬首」
王様:「え? いや、ちょっ! 分かったから!先生の力は分かったから!」
孫子:「将軍に任じられたからには、王命でもきけないことがあります(ニコ)」
寵姫:「マジ?」
孫子:「マジ。(スパーン)」
王様:「くぁwせdrftgyふじこlp」
孫子:「はい、じゃあ次、前のほうのふたりが代わりに隊長ね」
女官:「は、はいっ」
ドラ:「どーん」
女官:「え、えいっ」
ドラ:「どーんどーん」
女官:「えいっ、えいっ」
孫子:「ほら、できた」
王様:「……ワシ、もう、無理……」
だいぶ適当ですが、だいたいこんな感じ。『史記』に記されたエピソードです。孫子に逆らっちゃダメですね。
さて、前置きが長くなりましたが、今日は「虚実篇」です。なんか兵法っぽいタイトルに燃えますね。
でも、今の日本語では虚実って「ウソとまこと」って感じですが、ここでは、虚=隙がある状態、実=十分に備えた状態、って意味らしいです。
◎──『孫子』虚実篇(一〜二)
先に戦場にいて敵を待つのは戦いやすいが、敵より遅れて戦場についていたのでは苦労することになる。だから戦上手はそうならないよう、相手をしっかりコントロールして、相手の思うままにならない。
敵を上手く操り自発的に行動を起こさせるには利益で誘導する。逆に行動を止めるには害があると思わせる。
そうやって、敵が余裕のありそうな時には操って疲れさせることができるし、食料が十分な敵を飢させることもできるし、敵が落ち着いているようならば誘い出して釣り出すこともできる。
敵が進軍せざるを得ないようなところに進軍し、また予想外のところに進軍し、千里の行軍でも疲れないようにできるのは、敵がいないところを上手に選んで進むからである。
攻めて必ず勝つのは敵の守りがないところを攻めるからで、守って必ず守りきるのは敵が攻めないところを守るからである。
だから攻めるのが上手い将軍を相手にした敵は、どう守れば良いのかわからず、逆に守るのが上手い将軍を相手にした敵はどこを攻めればよいのか分からない。
微かに、微かに、ついには姿形もない。神秘的で、神がかって、ついには音も立てない。そうやって敵の運命を手中に収めるのだ。
◎──『孫子』虚実篇(一〜二)を読み解く
「人を致して、人に致されず」という有名なフレーズがここではでてきます。相手を思うままに操って、相手の思い通りにはならないでいる。つまり主導権を握ることが大事って話ですね。
そんなことは分かってるよ、だから具体的にどうすりゃいいんだよってな話も多い孫子ですが、ここに書かれている相手を意のままに動かそうとする方法は、上手下手や成否はともかく、結構みんな無意識にやってることです。
たぶん、子どもでもやってます。
何かして欲しい時には、メリットばかりを強調する。逆にして欲しくない時は、デメリットを強調する。ね、やってるでしょ。
達人は相手の心理を読んで、上手く隙をつき、バレないように操る。やっぱり、そんなこと自在にできたら苦労しないよって話ですけども。
◎──『孫子』虚実篇(三〜五)
進撃して相手がそれを防ぎきれないのは、その虚をつくからである。退却して相手に追わせないのは、こちらが迅速で追いつけないと思わせるからである。
そして、こちらが戦闘を望む時は、相手がたとえ土塁を高く積み堀を深く掘り防御に徹しようとしていても、相手が救援に向かわざるを得ないところを攻めればいい。
逆に戦闘におよびたくない時は、敵の目標を上手くそらしてしまう。そうすれば、守りを固めるまでもなく、地面に線を書いて仕切るだけでも、戦いにならない。
相手には分かりやすい態勢を取らせておいて、逆にこちらは動きの読めない形をとることで、こちらは集中して狙えるのに対して、相手は兵力を分散させることになる。
例えばこちらが一団となって、相手が十に分散しているとすれば、こちらは十の力で相手の一を攻めることができる。こちらは多く、相手は寡兵。大勢で小数を攻めれば、戦いは少しですむ。
こちらが攻める場所が分からないならば、相手は分散して守るしかない。分散すれば、戦う相手は少なくなる。
相手が前に備えれば後ろが手薄になり、右に備えれば左が手薄になり、全部に備えようとすれば、全部が手薄になる。
どこか手薄になってしまうのは、相手に対して備える側の立場であるからだ。大勢で攻められるのは、相手に備えをさせる側の立場であるからだ。
だから、戦う場所が分かっていて戦う日が分かっているなら、そこが千里の先でも会戦するべきだ。逆にそれらが分からないなら、左軍が右軍を救うこともできず、右軍が左軍を救うこともできず、後軍が前軍を救うこともできない。
ましてや、遠いところで数十里、近くで数里離れた友軍を救うなんてできない。私が考えるには、敵国である越の国の兵がいかに多くても、勝敗には関係してこないだろう。
勝利は思いのまま得られる。いくら敵が多くても、戦いにならないようにしてしまうのだ。
◎──『孫子』虚実篇(三〜五)を読み解く
相手の形をつかみ、こちらの形はつかませない。こちらの動きがわからないと、相手は全方位に対して意識も力も分散するから、集中して一点突破するこちらが優位に立てる。そんな話。
勝敗は情報がすべて、というスタンスですね。敵情をつかむことで、意のままに相手を動かすこともできるし、有利な戦局を作り出すこともできる。主導権を得ることができる、と。
◎──『孫子』虚実篇(六〜七)
敵情を調べて得失を計算し、相手を動かしてみてその特徴をつかみ、敵に戦闘態勢を取らせてみて地勢の有利不利を把握し、軽く小競り合いを起こして強いところと弱いところを知る。
軍の態勢の極みは、動きの読めない形をとることである。そうすれば敵のスパイにもこちらの動きをつかませず、敵の智将にも計略を立てることができない。
相手の態勢をつかむことで勝利を得られるが、一般大衆には理解できない。みな、勝ったことは分かっても、どうやって勝利したのかは分からない。勝ち方には同じ繰り返しはなく、相手の態勢に応じて、それは無限に変化するものなのだ。
軍の態勢というものは水のようなものだ。水は高いところを避けて低いところに流れる。軍の態勢も、敵の備えを避けて、隙を撃つ。水は地形に応じて流れを作るが、軍も敵に応じて勝利をつかむ。
つまり、軍には決まった態勢はなく、水にも決まった形などない。敵の態勢に応じ変化し勝利をつかむことができるのが、神妙というものである。
木火土金水の五行にも相性による相克があって、常にどれかが勝つというものではない。四季は移ろう。日の長さも変化する。月には満ち欠けがある。そういったようなものだ。
◎──『孫子』虚実篇(六〜七)を読み解く
究極の形は、形がないこと。……禅問答みたいな。
要するに、臨機応変ってこと。決まった形なんてない。相手の態勢に応じて、こちらが有利に戦える態勢をとる。そのために相手の情報を探る。
ただまあ普通は、相手もきっと同じように考えるから、難しいんですけども。
◎──今回はここまで
虚実篇、以上です。分かるような分からないような話というか。書かれていることは分かるけども、どうすればいいのかはなかなか分からないという。
・情報をつかんで分析し、有利な体勢をとれ。
・固定的な必勝パターンなんてない、臨機応変にことにあたれ。
ってことは胸に刻みつつ、あとは悩むしかないですね。特に、誰かと戦う場合には。
だって孫子以降、たいてい相手も孫子の兵法を知ってるわけですしね。探り合い、主導権を奪い合い、隙を見せた方が負ける。そんな感じ。
当たり前じゃん、って話も多いんですけど、それらをちゃんと全部意識して、隙を見せないでい続けられるかってことが難しいんですよね。
だから戦国武将なんかは、座右の書にしたり、暗唱したり、書いて貼ったり、旗に書いたり、とにかく常に意識できるように努めたのかなと思います。隙見せたら死ぬから。
……趣味でゆるゆる読んでいられる時代でよかった。(笑)
【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
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