腕時計百科事典[90]修理店の探し方
── 吉田貴之 ──

投稿:  著者:



腕時計について、文章を書いたり、販売したりしていると、それなりの頻度で「修理」について相談されることがあります。

1980年代頃までは、街には時計販売店や時計修理店が相当数あったように思いますが、昨今はほとんど見かけなくなりました。せっかく高価な腕時計を手に入れたとしても、機械式時計に興味がわいたとしても、壊れたらどうするのか、またどれくらい費用がかかるのか、そもそも修理ができるのか、などなど、修理の不安はつきまといます。

今回は、「街の修理店」を見つける方法についてまとめてみました。





◆街で探す

先にも書きましたが、近年「時計修理店」をみかけることはなくなりました。もともと少なかったことに加えて、この10年で更に少なくなっているようです。これは、修理師さんが「引退」しているためです。

ちょうど1970年代後半から1980年代に全盛期で活動していた修理師さんは、いまや60代後半から70代になろうとしています。いずれも、仕事がないから廃業するというよりは、体がついて行かないからとか、ゆっくりしたいから、などの理由でやめる方が多いように思います。

◆インターネットで探す

腕時計の修理に困ったことがある人ならば、おそらく一度はインターネットで修理店をさがしてみたことでしょう。しかし、時計修理店は保守的だからなのか、仕事に困っていないからなのか、Webサイトで情報発信をしているような修理店はほとんどみあたりません。東京、大阪、愛知、福岡などの大都市にかろうじていくつかみられるくらいです。

◆時計販売店に尋ねる

では、そんな状況であるのでしたら、時計販売店はどうしているのでしょうか。大手の販売店や質屋さんでは、修理師を抱えているところもあります。一方で、中小の時計販売店では「自分のところの修理であれば、なんとか請けてくれる修理師さん」がいることが多いようです。

多くの場合、そのような修理師さんはおどろくほど仕事が詰まっており、個人の修理を請けてくれるようなる余裕はないはずです。

◆海外に依頼する

こうなると八方塞がりのように思えますが、いくつかのポジティブな情報を紹介しておきましょう。世界に目を向けると、手が空いていそうな修理師さんがそれなりにいるようにみえます。

特にアジア、ヨーロッパでは、日本よりも古いモノを大切に扱う文化が発達しており、部品の取引や修理の受付も活発に行われています。ただし、誰もが想像するように、文化の異なる海外と取引する不安や、配送時のトラブルの可能性があることはいうまでもありません。

◆購入するときから修理を意識する

一番かんたんで楽な方法は、「買ったところでメンテナンスをしてもらうこと」です。先に挙げたようなお抱えのと修理師さんや、海外の修理師さんにも、お店の責任で修理を依頼してくれるはずです。ただし、それなりのお金と、予想を遥かに上回る時間がかかることは覚悟しておきましょう。

◆修理店を見つけたら

幸運にも修理店をみつけることができたのであれば、まずは信頼関係を作ることから始めましょう。トラブルや症状をわかりやすく伝えたり、費用をきちんと払ったり、修理が完了したら早めに受け取るなど、あたりまえのことをするだけで良いはずです。

たまにしか利用しないサービスだからこそ、お互いに気持の良い取引をしていれば、いざというときにきちんと対応してくれるはずです。

◆自分で修理するのもアリ

「修理店の探し方」といっておきながら、これを最後のセクションとするのはいかがなものかとも思いますが、自分で修理できるようになるのもひとつの手です。

YouTubeなどには、わかりやすい修理動画などもたくさんアップロードされています。少しづつ道具を揃え、できることからやってみるのも趣味としては面白いのではないでしょうか。簡単なメンテナンスを自分でできれば、多忙な修理店の負担もへらすことになり、自分で修理すれば、腕時計への愛情も一層高まるはずです。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
https://www.idia.jp/

腕時計ポータルサイト:腕時計新聞
https://www.watchjournal.net/


兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。