再評価大百科[001]回覧板を再評価する
── 吉田貴之 ──

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今回再評価するのは「回覧板」です。回覧板は現在も利用している地域も多いので、再評価の対象とはならないかもしれませんが、そのメリットやデメリット、新たな可能性を考察するのは面白いのではと思い、テーマとしました。





◇利用するハードルの低さ

回覧板の一番のメリットは、利用するのに特別な道具も知識も必要ないことです。最近はコミュニティの連絡手段として、メールやLINE、SNSを使いますが、これらはパソコンやスマホを持っていることが前提だったり、ある程度のITリテラシーが必要だったりします。回覧板は老若男女、誰でも利用できるコミュニケーションツールです。

◇確実な連絡

また、回覧板は確実に情報を知らせることにも長けたツールです。回覧板は、一度受け取ると、内容を確認し、次の人に回すまでが一連の流れとなっています。これにより、誰かが情報を確認したことを、前後の二人で確認することが出来るようになります。

もちろん、誰かが回覧を止めてしまう可能性もありますが、それも前後の二人を追うことで確認できるため、責任を持って情報を伝播させることができます。

◇コミュニティの範囲の明確化

集落であってもサークルであっても、回覧板を手にすることが、そのコミュニティに属しているしるしとなります。これにより、自分が気にかけなければいけない範囲が明確になるので、諸々の調整がしやすくなるはずです。

◇コミュニケーション

大抵の回覧板は、物理的な距離の近い人同士を結んで形成されるはずです。回覧板を回す行為が、否応なしにコミュニケーションをとることに繋がり、コミュニティの連携の強化に繋がります。

◇望ましくない使い方

回覧板を利用する際、最も良くないのは自分のところで回覧を止めてしまうことです。回覧板のすべてのメリットが失われ、回覧板を前提としたコミュニケーションがなくなり、結果としてコミュニティの状態が悪化します。

また、回覧板は適度な情報量である必要があります。回覧する内容が複雑過ぎたり、内容が薄すぎたりするのも、コミュニティメンバーにとって回覧板の重要度を下げてしまうからです。

◇ITとの相性

「電子回覧板」と称した、ITで回覧板を代替しようとするサービスがいくつかありますが、調べた限りでは上記のメリットを活かしきれているものはみつかりませんでした。

会社でも自治体でも地域でも、情報伝達には苦労しており、画期的と思われたITを使った連絡では「見られていない」「見ているけれど見ていない」状況に陥っており、なかなか最適な手段は見つかっていないようです。回覧板のメリットをうまく生かした、情報伝達方法の登場を期待します。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の
整理や表現について研究しています。