まにまにころころ[186]ふんわり中国の古典(論語・その49)
── 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito ──

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コロこと川合です。俳優の竹内結子さんの訃報が。竹内さんと言えば、NHK大河ドラマ『真田丸』の茶々こと淀殿です。羽柴秀吉を演じられた小日向文世さんの怪演ともあいまって印象的でした。謹んでお悔やみ申し上げます。

『真田丸』では序盤に本能寺の変がありましたが、『麒麟がくる』ではそこをゴールとして話が進んでいきます。いや、本能寺の変がゴールかどうかはまだ分からないですけど、多分そうですよね。明智光秀の物語ですから。

『真田丸』での本能寺の変は、後にも先にもないくらいに一瞬で片付けられて、ハコちゃんこと岩下尚史さんが演じる明智光秀の出番も、イメージカット程度。

それに比べて『麒麟がくる』では、その本能寺の変を一年かけて見せるドラマと言えなくもない。本能寺の変を扱った、歴代最長の大河ドラマですね。





桶狭間の戦いあたりで中断していた放送も無事に再開、足利義昭と織田信長が出会うところまで進んできました。光秀もいよいよ信長と本格的に絡みはじめ、ここから信長とともにぐいぐい天下を駆け上っていくはず。

信長好きとしては、今回の異色の信長がどんな風に天下を手にしていくのかも注目ポイントです。ここからがいよいよ本番って感じですね。もう十月ですが、二か月中断した分を延長して当初予定通りに放送するのであればあと五か月。足りない気もしますが、その分濃密だと信じて楽しみましょう。

そんなこんなで期待が高まる中、私は滋賀まで安土城を見にいってきました。これが初訪問で、安土城趾から博物館などの各施設まで、丸々一日かけて堪能。

ここから安土城の話をはじめると長くなるので、詳しくはまたの機会にしますが、安土城天主の最上階、障壁画に孔子先生の姿が描かれていました。

「信長の館」という施設に、1992年に開催されたセビリア万博(スペイン)へ出展された、原寸大の安土城天主(五階・六階部分)が展示されていて、そこでも再現されていました。

これ、適当に再現したわけではなくて、ちゃんと史料にあるそうで。もちろん、焼失しているのでどんな絵だったかは想像による再現ですが、当時、信長から京都所司代に任じられた村井貞勝が、内覧した際の記録を残し、その記録を、『信長公記』を記した太田牛一が引用していたそうで。

そうで、そうで、と曖昧ですみません。軽くググっただけの知識です。(笑)

それはさておき、安土城に孔子先生が描かれていたというのは興味深いですね。孔子先生だけでなく、中国の聖人たちが描かれていました。詳しくはまたの機会ということで、とりあえずここからは、信長も読んだかもしれない『論語』をまた読んでいくとしましょう。

◎──巻第七「子路第十三」六

だいたいの意味:孔子先生が仰った。その身が正しければ、命令せずとも行われる。その身が正しからざれば、命じたとしても従われない。

──巻第七「子路第十三」六について

為政者など人の上に立つ者が成すべきは、まず我が身を正すことからだって話。そりゃそうだって話ですが、だからこそ深い。

◎──巻第七「子路第十三」七

だいたいの意味:孔子先生が仰った。魯国と衛国の政治は兄弟だ。

──巻第七「子路第十三」七について

魯国出身の孔子先生は、衛国にも長期滞在されていたのですが、魯は周公旦が祖、衛は周公旦の弟、康叔が祖で、国の成り立ち自体が本当に兄弟でして。孔子先生の時代、徳の衰え、政治の乱れまでが、まるで兄弟のように似ていると嘆いての発言じゃないかと言われています。

◎──巻第七「子路第十三」八

だいたいの意味:孔子先生が衛の公子である荊について仰った。上手に蓄財している。蓄財し始めた時は「なんとか間に合うようになりました」と言った。少し蓄財が進んでからは「なんとか整ってきました」と言った。富んでからは「なんとか立派になりました」と言った。

──巻第七「子路第十三」八について

謙虚かつ着実に財産を蓄える姿を評価されています。やり取りとしては「儲かりまっか」「ぼちぼちで」の繰り返しが想像されるのですが、はからずも浪花の商人の徳の高さが孔子先生に認められました。

◎──巻第七「子路第十三」九

だいたいの意味:孔子先生が衛に行かれた。冉有が御者を務めた。

孔子先生が仰った。「人が多いな」
冉有が言った。「人口が増えれば、次は何をしたものでしょうか」
孔子先生が仰った。「富ませよう」
冉有が言った。「人々が裕福になれば、次は何をしたものでしょうか」
孔子先生が仰った。「教育をしよう」

──巻第七「子路第十三」九について

そう、そうなんだよ、この順番なんだよと、声を大にして言いたい。国力の根本はまず、人口。人口があってこそ、経済基盤が整う。そして経済を発展させて、人々を豊かにする。豊かになったところで、教育。

教育というのは、徳育のことですね。一般的な教育は、経済発展の時点で必要なので。経済発展の後、改めて精神的な部分の成長を促す、と。

人口を増やし、生活を豊かにし、心を豊かにする。もちろん実際には並行して進むんですが、優先順位というか、物質的な豊かさの先に、精神的な豊かさがくるんです。

為政者にはそこをもっと重く考えて欲しい。現代の政治家にも。人が減ってお金が足りないから増税しよう、なんてのは政治じゃない。そんなことしたらどうなるか、シムシティや信長の野望をプレイしていれば、子どもにだって分かる。(笑)

衣食足りて礼節を知ると言いますが、孔子先生も二千五百年前に仰ってるのに、なんで分からないのか。またたばこ税あげやがって、くそっ。←礼節足りてない。

◎──巻第七「子路第十三」十

だいたいの意味:孔子先生が仰った。もし私を用いる者があれば、一年で形にし、三年で完成させてやるのに。

──巻第七「子路第十三」十について

なかなか理解されず重用されない、孔子先生の嘆きと自負です。孔子先生を登用しない為政者の気持ちも分かりますけどね。孔子先生を用いるには、孔子先生の理想を実務に落とし込む人間が必要かなと思います。その両輪がないと、孔子先生だけでは国政は難しそうに感じます。

◎──今回はここまで。

信長とや安土城の話をもっとしたかったんですが、それはまた次回以降にでも。安土城、いいですよ。小山に築かれた城なので、ひと通り見て回ると、一時間くらいのハイキングになります。汗だくになって、入り口の案内所でシャツ買って着替えました。(笑)

駅からちょっと離れてて、辿り着くのに30分くらい歩かなきゃいけないので、車があれば車がおすすめです。安土城各資料館は駅隣接なんですが博物館なども少し離れてますしね。

車がない場合、タクシーもありですが、駅前でレンタルサイクルという手も。今なら季節的にも気持ちよさそうなので、天気が悪くなければ、ちょうどいいかもしれません。料金は1時間200円くらいのようです。

安土城趾、それなりに人はいましたが、密と言われるような状況ではないので、ぜひ行ってみてください。


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