万年思春期[010]10話目「美味しい酒と料理」
── 木村きこり ──

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令和3年の4月になっても、なかなかコロナは治まらない。2回目の緊急事態宣言は解除されたものの、またリバウンドが起きるのではと考えると、おちおち外にも出られない。

友達と会って会食をする予定も、全部キャンセルになってしまった。当り前だと言えばそれまでなのだが、ストレスが少しづつ溜まっているなと感じる春である。

しかたがないので、自分で作った食事をもそもそと食べるのだが、なんだか味気ない。そこで「美味しい酒と料理とは?」と考えてみた。今回は、それを書いていこうと思う。





まず最初に言っておくと私は他人に「のんべぇ」と言われるほどには酒が好きだし飲む方だ。酒だけ飲む「のんべぇ」ではなく、つまみもこよなく愛す方で食事の量としては小食ではない。幸いつるんで飲む友達は、酒はともかく私よりも食べる人たちなので気兼ねなくがっつり食べていると言うわけだ。

その友達の一人に、「中東の料理」にこだわりがある人がいる。定期的に「中東の料理」が食べたくなるらしい。誘われて食べてみると、なるほどちょっとエスニックなスパイスが香る美味しい食べ物が多い。羊の肉を使った料理の割合が多く、ラム肉が好きな私としてはたまらない。

ある時、また「中東の料理」を、私含め三人の女友達で食べに行った。その店はちょっと変わったトルコ料理の店で、入ってすぐ靴を脱ぎ、絨毯が引いてある場所に直接坐り、ご飯は絨毯の上に木のプレートを置いて、その上に出てくるというなんとも不思議な店だった。(中東では当たり前なのかもしれないが)

まずはビールを頼もうという話になり、私はチュニジア産のビールを頼んだ。小瓶で出て来たものを飲んだら、思った以上に飲みやすく、日本のアサヒスーパードライに似てさっぱりとした感触だ(あくまで個人の意見だ。)。

ふと上をみると、トルコの伝統品なのだろうか、色とりどりのランプが天井からぶら下がって、その光が後ろにいる客に降り注いでいた。

その時思ったのだ。「美味しい酒と料理」を今自分は味わっている、と。

私はそれまで、あまり飲み屋や店の装飾というものに関心がなかった。食べることと飲むことに必死すぎるあまり、まわりに目がいかなかった。しかし、このトルコ料理屋に行ってからだろうか、外で食事をするとき店の中の様子も自然と見るようになってきた。

今まで見てなかったというのがむしろ問題だったのだろう。どんな店も掛けてある絵、使うグラスや皿、店員のコスチュームなど、様々な個性があっておもしろい。

昔、知り合いに食事のスケジュールを決める際、「テキトーに美味しい店に入って上手いもん食ってりゃいいんだよ」と言われたことがある。その時私は不快に感じたが、何故そう思ったのか、今なら分かるような気がする。

「テキトー」にやっているお店に、たぶん美味しい店はない。いい塩梅の意味である「適当」ならあるかもしれないが。皆それなりに誠意をもって食事や酒を運び、楽しんでもらおうと思っているのではないだろうか。

そんなことを考えると、今コロナで苦しんでいる飲食店を何とかして応援したい。そのためにも、地元や地方の店の、どのテイクアウトを頼もうかと考えて悩んでいる毎日である。

どうか、どの飲食店もコロナに負けませんように。力になれる範囲ですが応援します。


【木村きこり】
漫画家/美術家
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